氷河の呻き

キーナイフィヨルド氷河クルーズ

 第8日目の朝を迎える。アラスカ滞在は今日で最後、明日は移動日。キーナイ出発は8時半。朝日に向かって東へ走り出す。朝霧が湖や川の上に漂っている。小さな湖の横を通った時、湖のほとりでる小道を発見しちょっと寄り道してもらう。車を降りて朝の透き通る空気で深呼吸!

小休止を挟んで走り出すと、キーナイリバー、キナイ湖と絶好の釣りスポットが朝日に輝いている。夏のアラスカで キャンピングカーで釣り三昧もいいかもしれない。、ムースパス(峠)で右折。一路港町スワードを目指す。
時々アラスカ鉄道が車窓から見える。アラスカ鉄道はスワード〜アンカレッジ〜デナリ〜フェアバンクスとつながっている。
午前11時前、港町スワード到着、天気快晴、

風弱く絶好の氷河クルーズ日和。 受付を済ませ乗船する。事前にケンから「小さなボートだから揺れるぞ〜」と脅されていたが結構大きなボート、日本ではシップの部類に入る大きさだと思う。11時半出航、これから6時間の氷河クルーズが始まる。
 
 最初に登場したのは2頭のラッコ。ノンビリ、プカプカ浮いている、彼らは sea otter というのでイタチの仲間。
 次はゴマフアザラシ。ゴロゴロしているアザラシを尻目に海にダイブする小さな黒い影はカワウソだ。札幌近郊の石狩川を初め日本各地にたくさんいたカワウソは、河川の整備と共にあっと言う間にいなくなった。北海道が急激な開拓で失ったものがアラスカにある。これは今回の旅で、度々感じたことだった。

 お次は トド(Sea Lion)のコロニーに近づいていく。海岸の岩に上に赤茶の物がゴロゴロしている。結構大きい岩が時々動く?それがトド。船に驚いて岩の上からダイブする慌てん坊、大きなあくびをして「なんだ〜また来たか〜」と動じない者、眠ったままピクリともしない無反応者、トドの世界も個性や性格、様々だった。彼らの住処の周りには氷河が溶け出した深い青の海と深い森が広がっていた。

氷河崩壊

 氷河によって削られてカール、スプルスの深い森、奇石や絶壁など見ながら、船はついに巨大な氷河の壁の前に到着した。船がエンジンを止めるとそこは静寂の世界。周りの人の声と歩く音。それ以外は人工の音が一切ない世界。時々、遠くからギシッ!氷の軋む音が聞こえる、カラカラッ、ドーン! 小さな固まりが落ちた。氷河の壁までの距離を考えると小さな固まりでもダンプカー位はある。


 氷河が轟音と共に崩れ落ちる時、その音は「White Sunder」といわれる。大きな崩壊は津波となり衝撃波で魚が浮かび上がると言う。東南アラスカでは、氷河崩壊の津波で村が呑み込まれたことがあるそうだ。そんな大きすぎる崩壊は困るけど、雷の音は聞けるのか。中規模な崩壊が二回起き、もしかして次はと期待度が否応なく高まる。

 予兆はあった、氷の軋む音が違ったし、カメラマンの予感がした。 大きな固まりが轟音と共に黒い岩肌にあたり、細かくなって雪崩のようになって海に落ちる!着水地点に水しぶきがあがり真っ白になる。ドカーン、ビリビリビリ!!音で表すとすればこうなるのだろうか。いやこれも表現できない!ものすごい重低音が伝わってくるのだから。帰国後、T君が捉えたビデオ映像、音が大きすぎて音割れしていた!ウォーという船全体から声が上がり、拍手が続いた。ものすごい瞬間に立ち会えた。アラスカは最後にビックなプレゼントを与えてくれた。でも、この氷河で聞いた音はなんだか地球のうめきのように感じてしまった。氷河の崩壊は近年急激に進んでいるという。


ホエールサウンド

 氷河の崩壊の興奮と共に船は岐路に着いた。無人島近くでパフィンを見ていると左舷前方で黒い光沢感ある物体が浮かび水しぶきが上がった。そして水中に沈む、クジラだ! しばらくすると、今度は前方で水しぶき、塩を吹いた。
このエリアのクジラたちは、冬はハワイに移動し、子供を出産する。そして夏に4000キロを旅してアラスカの海に帰ってくる。アラスカの海の豊富なプランクトンで子供は育つ。まさに地球スケールの動物だ。
氷河をいただく山々を背景に、尾びれが浮かび上がる瞬間にシャッターを押す。


クジラは残念ながらこの一頭のみ。豪快なジャンプ見られずちょっと残念。ところでクジラは、有名な歌を歌っていたのだろうか

海の動物はこれで終わらなかった。港に戻りだした船の左舷前方で今度は小さな水しぶきがあがる。オルカ(シャチ)だった。好奇心一杯の子供のオルカは船に近づくと、船と並走してジャンプを繰り返す。 と一頭がすっと深く潜る。今度は右舷だ!予想通り!今度は右舷でジャンプ!ハイスピードのショーは見応え十分!
 やがて船は港に近づく。今日は一日快晴!
最高のクルージングだった。


LinkIconアラスカ最終章